端午の節句には、粽と共に必ず柏餅を供えますが、これは、粽より転化したもので、柏の葉には薬分を含んでいるといわれているので、菓子に用いたものと思われます。
柏餅も、相当古いものですが、年月は明らかでありません。
元来、柏の葉は、古い時代に食器に使用されていたことから、その古い生活を、そのまま表現したのが柏餅と思われます。
餅菓子類に、椿の葉、笹の葉、桜の葉、柿の葉、菊の葉、梶の葉など、木の葉を使用するのも、柏と同様の意から用いられたものです。
なお、柏餅に味噌餅を用いたことも古い調理法のなごりからです。
即ち、味噌は砂糖利用以前は調味料として使われていたもので、千利休時代から応用されていました。
1981年10月 「製菓製パン」誌より
―江戸時代に端午の節句と結びついた柏餅―
粽は平安時代から既に文献に見えるのに対し、柏餅は室町時代も末期からの登場である。作者未詳だが「天正日記」の天正十八年(一五九〇)七月二十八日の条に「五郎兵衛の嬶(かか)かしわもちくれる」とある。
端午の節句が正式に男児の節句になったのは江戸時代に入ってからのことで柏餅と節句が結びついたのは、年代的には寛永年間(一六二四~四四)より後とされている。
柏の葉は新しい葉が育つまで落葉しないことから子孫繁栄のめでたい葉とされたので、男児の健やかな成長を祈る気持ちが縁起を担ぎ、おのずと五月五日の男児の節句に供える様になったのであろう。