さくら餅は、江戸時代の享保二年(1717年)の頃、江戸向島の長命寺の門番であった山本新六という人が、売り出したのが始まりだといわれます。
当時、向島堤には、数百の桜の樹があって、桜の落ち葉を毎日掃除していた新六は、桜の葉を無駄にするのが惜しくなり、試しにその葉を醤油の空樽に塩漬けにして売ってみたが、すぐ飽きられたので、今度は、小麦粉を薄く溶いて鉄板の上で薄く延ばして白焼きにし、芯に小豆のこし餡を入れ二つ折りにし、その上から塩漬けの桜の葉を付け、これを〝さくら餅”として売ってみたといいます。
これが花見どきの遊客に喜ばれ、たちまち人気が出て、作っても間に合わないほど売れ、ついには、江戸の名物の一つとなったと伝えられております。
降って、天保年間(1835年)に出版された〝江戸名物初篇”の中に名を連ねるまでになりました。
1979年4月 「製菓製パン」誌より